縁があって結婚に至ったものの、結婚前には見えなかった配偶者の本性が見え、「こんなはずじゃなかった…。」という思いになることもあるかと思います。
実は、私もそうなってしまった一人です。
私の元夫はいわゆる「DV・モラハラ夫」であり、私に対して言葉での暴力はもちろん、身体的なもの、また金銭的なものなどもおこなっていました。
そんな生活に私は耐え切れず、結婚後「離婚」の2文字が脳裏をよぎりました。
しかし、正式に離婚が成立するまでは準備期間を含めて数年ほどかかりました。
なぜなら、モラハラ加害者との離婚はとっても難しいのです。
モラハラ加害者は常に優位でいたい
モラハラをする人は、基本的には自分優位で事を進めたいと考えます。と、言うのも「モラハラ被害者は自分より下の立場」と考えているからです。
しかし、そもそも家庭内において「上下関係」なんてある方がおかしなもので、本来は家族みんなが対等な立場であるべきです。ですが、モラハラ加害者にはそういった概念はありません。
彼らの理論では、加害者は常に被害者より上の立場であるので、「決定権は全て自分にある」と考えます。反対に、被害者に対しては「発言権すらない」と考えているので、被害者側からの意見や忠告等は全く聞く耳持ちません。それどころか、「俺に意見をするな」と威圧的な態度で話を終わらせようとします。
話し合いができない
そもそもモラハラ加害者にとっては「被害者側の話は聞くに値しない」ものなので、いくら被害者側が訴えようとしても、加害者は話を聞くことすらしません。
話を聞かないので、当然モラハラ加害者との「話し合いは不可能」であり、離婚に向けた話し合いすらさせてもらうことができません。
配偶者がモラハラ人の場合、被害者側は「離婚したくても話し合いができない」という事態に陥ることがほとんどです。
話し合いはできないが加害者側は一方的に意見を言う
離婚に対する話も、モラハラ被害者側からの意見を聞く耳は持たないものの、ふとした拍子にモラハラ加害者から
「お前と一緒にいるのは俺が恥ずかしいからもう離婚したい。」
など、自ら離婚話を切り出すこともあります。
ただ、この場合は加害者側は「あくまで脅しのつもり」で言っているだけのことが多く、被害者側がこれ幸いと「じゃあ、離婚しましょう。すぐ手続きしていきましょう。」と乗り気になっても、
「いや、お前がこれから気を付けるっていうなら俺は我慢しててやる。」
などと急に離婚しない方向に話を戻したりします。また子どもがいる場合には、
「子どもがかわいそうだと思わないのか?それでも母親か?」
と子どもを話に出して被害者側に離婚を思いとどまらせようとしてきたり、
「離婚するのはいいが、子どもは俺が引き取るし、お前は着の身 着のままで 家を出ろよ。」
と、現実的に不可能なこと(子どもを置いて出ること、財産を持たずに出ること)などの条件を提示してきたりします。これももちろん、被害者が本当に出ていくことを阻止するための計算です。
もちろんそんなの気にしないで荷物をまとめて子どもと出ていければ楽なのですが、加害者によって日常的に恐怖(暴力の恐怖、人として話すことのできない恐怖、経済的に牛耳られている恐怖など)を植え付けられている被害者側からすると、
「加害者からにげだすことは絶対に失敗は許されない」
という感覚であり、離婚に向けての別居をするにしても慎重にならざるを得ないのです。
そして一つ言えることは、
基本的にモラハラ加害者は被害者との離婚を望んでいないのです。
モラハラ加害者は離婚協議に第三者を挟むことを嫌がる
モラハラ加害者と被害者の1対1での話し合いは不可能なので、間に人を挟んでの話し合いをしたいと考えるのが被害者側です。両親、友人、裁判所などいろいろなパターンがあります。これはごく普通の考えです。
しかし、加害者は人を間に挟んでの話し合いを極端に嫌がります。
私の場合は、調停からの話し合いを予定していましたが、元夫は自分がさらし者にされると感じたのか、調停には一度も来ることは無く、また欠席の連絡もなく、その後の連絡すらすべて無視をするという荒業ですべてから逃げました。
また、私と同様の経験をした人の話では、知人を間に挟んで話し合いに臨んだが「お前だけ味方を連れて卑怯者」呼ばわりされてしまったそうです。
ではなぜ話し合いに人を挟むことを嫌がるのか?
恐らく、その話し合いで「自分の評価が落ちることを懸念している」「負け戦であること」を自覚しているからではないでしょうか。
基本的にプライドが高いモラハラ人
モラハラ加害者のほとんどが当てはまることと言えます。
実際に社会的立場がそれなりにある人が家庭内では「モラハラ」をおこなっているという話もよく聞きます。
私の元夫は社会的立場そのものはいたって普通…もしかしたらそれほどでもなかったかなとも思っています。職業的にも「士業」と呼ばれるようなものでもありませんでしたし、社内での立ち位置も「主任か係長」くらいのものでした。(それ以上にはなれませんでした。)
ところが、この中途半端(全国係長さん申し訳ありません)な立場が彼の中では「役職付きの俺偉い!」という考えとなり、もともと高かったプライドに拍車をかけました。
「お前は俺より稼ぐことができない!」
「俺に(金銭的に)頼り切って生活してんじゃない。」
「俺は社会的にも認められているんだから、お前は俺に指図するな。」などなど…
当然暴言も増えましたし、家事は全く手出ししません(口出しはします)。育児も気が向いたときに子どもと少し遊ぶ程度で、たとえ子どもが体調を崩しても「母親の仕事」と言って、看病や通院時には全く役には立ちませんでした。
話は少しそれましたが、モラハラ人は社会的な立場がどうであれプライドがやたら高い人が多いのは事実ですので、「他人から自分の落ち度を指摘されること」を極端に嫌がります。
モラハラ人は「モラハラ」そのものを「間違った行動」と思ってはいないようですが、「正しいことをしている自信もない」と思うのです。
元夫の場合も、自分の両親から度々「私に対する態度」を注意されていました。しかし、「『俺は素晴らしい』と思っている自分」が注意をされることに我慢ができない元夫は、次第に両親と合わないように居留守を使ったり、両親が来訪時には「買い物」と称して外へ逃げ出すようになりました。
この元夫の行動からも推測できますが、
- 人に注意されることに納得いかない(我慢できないプライドが許さない)
- 自分がモラハラをしていることを正しいと思うのであれば、注意に対して反論することもできるが、あえてそれをしないことを考えると、「正しいこと」とも思っていない可能性もある
- 自分が人から注意を受けている姿を自分より下と思っている被害者に見られたくないだけかも…(負けだと感じる)
など、モラハラ人は「自分とモラハラ被害者の間に人が介入することを嫌がる傾向にある」のではないかと思います。その理由は、「自分が否定されるかもしれない可能性」を考えるからです。
モラハラ加害者との離婚を進めるには
以上のことから、
- モラハラ人との話し合いは不可能であること
- 話し合いに第三者を介入させることも難しいこと
はおわかりいただけたと思います。
でも、1日でも早く辛い生活から解放されたいですよね。そのためには念入りに準備を進める必要があります。
まわりくどい話は逆効果 話し合いは専門家に任せる
知人友人や、親兄弟に間に入ってもらっての話し合いはあまりお勧めできません。
と言うのも、モラハラ人は「口が達者である」場合がほとんどです。それに加えて「外面の良さ」もあります。
話し合いに入ってもらう人が「知人や身内」である場合は、加害者の本来持っている外面の良さが、周囲の判断を鈍らせる場合もあります。
場合によっては被害者の方がみんなから諭されてしまい、意にそわない結果となる場合もあり得ます。
本気でモラハラ加害者との別れを望むのであれば、やっぱり専門家を間に挟むことをお勧めします。できることなら、「弁護士」に相談するところから始めることが良いと思います。無料相談を受けているところも多いので、敷居はそれほど高くはありません。
できることなら「調停」から弁護士に依頼
弁護士に相談の後は「離婚調停」に駒を進めることになると思います。調停そのものは個人でも進めていくことは可能ですが、できることならば調停段階から弁護士に介入してもらう方が良いでしょう。
なぜ弁護士に介入してもらうことがお勧めかと言うと、
- 相手が話の通じない「モラハラ人」であること
- 調停期間中に「モラハラ人」から電話やメール、または直接的な攻撃に合わないとも限らないこと→弁護士が間に入れば、弁護士を通じて連絡を取り合う形になるため、精神的負担が軽くなる。
- モラハラ人が万一法に触れるようなこと(脅し、暴力等)をしてきても、正攻法で太刀打ちできる
- 弁護士を立てることで調停委員に「離婚に対して本気であること」「耐え難いモラハラの被害を受けていること」のアピールにつながる
- 身内や友人にも弁護士と共に「モラハラ家庭内での真実」を伝えることができる→先入観のない中立な立場の人の必要性
- 万一「調停不成立」となってしまった場合、そのまま同じ弁護士に再依頼することで「離婚裁判」への手続きがスムーズに行われることもあります→それまでの経緯をすべて把握しているため
からです。
ただし、弁護士に依頼するとなりますと「費用」もかかることになりますので注意が必要です。「法テラス」の制度を利用しながら上手に進めていきたいですね。
別居は必須
正式に調停が始まる前までにモラハラ人との別居はしておくべきです。
モラハラ人は元々「人の介入に良い顔をしない」ので、自分たちの離婚話に他人である「裁判所の調停委員」や「弁護士」の介入に対して不満が溜まります。
万一この時点でまだ同居をしている状態であると、
「俺の顔に泥を塗りやがって、何様のつもりだ。」
「もうあんな所に行かなくてもいい、時間の無駄だ。もし行ったら承知しないからな!。」
など、被害者に対して「裁判所に行くな」「俺の言うことを聞かなかったらひどい目にあわすぞ」と圧をかけてきます。
もちろん圧をかけるだけで済めばよいですが、ひどい場合ですと家から出ないように監視されることも…。
まさかそんなことあるわけないじゃん…と言えないのがモラハラの世界なのです。
そうならないためにも、離婚調停を行うときはモラハラ人から物理的な距離をとってからの方が良いでしょう。
何があっても後戻りしてはならない
モラハラ人と物理的な距離をとって離婚調停を開始したら「何があっても後戻りしてはならない」です。
離婚調停の場での話し合い中にモラハラ人は色んな方法で被害者と関係の修復をしようとしてきます。
- 脅し(別れたら許さないぞ)
- 泣き落とし(俺はお前を愛している…云々)
- 貶し(子どものことを考えられない非常な奴…など)
- 良い人ぶり(俺がもっと頑張るから)
などなど、あの手この手で被害者を手元に戻そうとしてきます。
しかし、これらはその場しのぎでの発言であり、本当にそう思っていることではありません。この言葉に騙されてはなりません。
もしモラハラ人によるこれらの言葉で、心の中が少しでも揺らいでしまった場合には、一度記憶を過去に戻らせ、今までどんなことをされてきたのかを思い返すことが大切です。
それでも「やっぱり彼とやり直したい」と考えるのであれば、何人たりともそれを止める権利はありませんので「どうぞご自由に」ではありますが、再びつらくなってしまったときにはモラハラ人から逃れることがさらに難しくなることだけは覚悟しておく必要があります。モラハラ人は同じ失敗をしないためにも、被害者に対し一度逃げかけられたことで監視の目をさらに光らせる傾向にあります。2度目は「逃さないぞ」と見張っています。モラハラ人の執着心は相当なものです。
つまり、モラハラ人との離婚は「失敗が許されない」し、「戻ってはならない」のです。
さいごに
モラハラ加害者との離婚は容易ではありません。でも、相手方のモラハラやDVが原因の場合「離婚」をすることは可能です。
そのためには「しっかり話し合うことのできる環境」を整え、離婚に向けて「迷いを持たないこと」が大切です。
そもそもモラハラ加害者と結婚なんてしなければいいのに…という人もいるかと思いますが、モラハラ加害者は「普通の人の皮」をかぶって生活していますので、モラハラ人かどうかの見極めが非常に難しい場合がほとんどです。むしろ、「良い人そうに見える」のがモラハラ人の特徴です。
そして多くのモラハラ人は「同棲後」や「結婚後」からモラハラ被害者に対して本性を見せるので、「結婚前にモラハラ人かどうかの見極めは難しい」のです。
もちろん、「モラハラ人疑い」の人を見つけ出す方法もありますが、それはまた別記事で。