娘が高校吹奏楽で学生指揮として活動を始めて1年余りがたち、部活の引退12月まで残りわずかとなりました。
学生指揮は、学校によってその重要性が異なるともいわれていますが、少なくても娘の学校では「先生にとってはかなり重要なポジション」だったのではないかと思っています。
学生指揮は先生の指名制

人をまとめる部長や副部長とは異なり、音楽をまとめる学生指揮は、
- ある程度音を聞き分けることができる能力
- バンドの強み弱みを正確に理解する能力
- 先生の音楽的な指示を的確に伝えることのできる能力
- 他の部員が認める音楽的な能力が備わっている
- リーダーシップが備わっている
などが求められます。
部長や副部長に関しては、リーダーシップがある人物でOKですが、学生指揮は加えて「音楽的な能力」も求められます。
「音楽的な能力」は、素人目にはわかりかねる能力です。
しかし、音楽を専門に学んだ先生にはわかるようで、この役に関しては先生からの指名のみで決まります。もちろん、生徒は立候補もできません。
学生指揮に関しては、音大出の先生という専門家が選出するので、まず公平な選出方法であると感じます。
学生指揮に指名された時の娘はあまり気が進まない様子だった
学生指揮になる前、学年で唯一幹部(副インスペクター)として活動していた娘は、翌年は「自分が正インスペクターになるものだ」と疑っていませんでした。
インスペクターは、部員の予定表を作成し、イベント時の当日のスケジュール管理などを主におこないます。いわゆる予定係的な存在で、事務作業に近い仕事内容でした。
それでも幹部役の中では最も仕事量のあるポジションであり、娘も頑張って翌年に備えて仕事を覚えていたのです。
ところが、先生からの指名によって「学生指揮」という全く別ポジションを任されることになってしまい、正インスペクターをやる気満々だった娘は、はじめこそ不満そうでした。
しかし、
- 役職内では唯一先生からの指名であること
- 正インスペクターには生徒の話し合いで別の子が決まったこと
- 「断る」選択肢が用意されていなかった事
などの理由から、半ばあきらめのような状態で引き受ける形となってしまいました。
学生指揮の仕事

これは、学校によって異なる場合があります。
単にイベント時の指揮をするだけの学校もあれば、基礎合奏の取りまとめや、正指揮者との連絡役を行う場合もあります。
娘の学校(公立高校)では次のようなことを行いました。
- 基礎合奏の取りまとめ
- 譜読みが苦手なパートや個人への指導(自らが演奏して音とリズムを教える)
- 先生不在時の練習メニュー考案・実施
- 校内イベント(文化祭や壮行会など)の指揮
- 音源から耳コピで楽譜起こし(部活時間外で個別に頼まれることが多い)
- 指定部分の編曲(先生の時間がないときに頼まれ、最終チェックは先生がしてくれるらしい)
基礎合奏の取りまとめや、イベント時の指揮は学生指揮あるあるですが、娘は曲の簡単な編曲やソロパートの作曲もさせてもらえました。
学生指揮の人数
高校吹奏楽においての学生指揮者は、奏者との兼任となるため、複数名いることが多いです。娘の学校では、その年の部員数によっても変動がありますが、学生指揮者は2,3名であることが多いです。そして、木管楽器と金管楽器で各1名以上になるように選ばれています。木管、金管それぞれのセクションリーダーがその立ち位置になるわけです。そしてその中から、さらに学生指揮長が1名選ばれ、イベント時ラストの曲を指揮し、アンコール曲とイベント終了後の撤収時の指示出しまでを担当します。
学生指揮は、部長・副部長・インスペクターなどの部の運営幹部とは性質が異なり、バンドの音楽的なものに関する責任者であり、正指揮者(娘の部では先生)としっかり連携をとって音楽を作り上げていく立場となります。
部内で学生指揮者が複数存在する理由は、
- 学生指揮者自身も奏者であるため、交代で基礎合奏などの練習を行うことが必要であるため
- 学生指揮者自身がソロを持つ曲の演奏時でも指揮者が不在とならないため
- 後任を育てるため(学年が1つ下の場合)
であると思われます。
学生指揮で大変だったこと
30名前後の部員数で推移している、部活動にやや力を入れている公立高校の吹奏楽部の中で、音楽的な責任者として活動しなくてはならなかったことは非常に大変だったと思います。
部員のモチベーション
本気で吹奏楽に打ち込む子は市内の私立高校(2校ほど強豪校がある)へ進学するため、公立にくる子は「初心者か吹奏楽の本気度がやや低めの経験者」が多いため、部員自身の練習態度に不真面目さが見え隠れしていたそうです。
部活動の時間に制限のある公立高校では、人一倍練習しないと私立の高校には到底勝てっこないという状況を娘は知っており、「練習をするように」他の部員に促していたのですが、やはりみんながみんなそういうわけにもいかず、一部の子はすぐにおしゃべりしたり、どこかへ行ってしまったり…ということもあったようです。
指摘事項が理解してもらえない
音楽のような芸術は、数学とは異なってはっきり正しい答えがあるわけではありません。どうしても抽象的な表現になってしまうこともあるのですが、例えば
- 金管の音が半音ずれている
- 音楽の縦軸がずれている
- 楽譜の読み間違いがある
- 周りの音を聞いてきちんとハモらせるように演奏をする
など、部員に対して指摘したことでも、指摘された部員が「?」となってしまうこともあったとのこと。部員一人一人が周りの音(自分以外の音)を意識していないため、我の強い音楽になることが多かったと娘は言っていました。
また、指摘されている意味が理解できない部員もいたため、何回言っても直らない(直せない)ということも起こっていました。
部長が口をはさみすぎ
中高生くらいならあるあるかもしれませんが…
娘が任された基礎合奏の段取りを、部長の子がダメ出しからの仕切りをしてしまうことが多く、娘が思い描いていた練習メニューがなかなか実行することができなかったようです。
本来、部長は部員のまとめ役であり、
- 練習をまじめにおこなうように促す
- 学生指揮と練習内容の共有(共有はするが手出しは基本しない)
- 部内が円滑に回るように常に気を配っている(基礎合奏の時に不真面目な生徒がいたら注意するなど活動が行いやすいようにするなど)
どちらかといえば、音楽的なことに関しては学生指揮のサポート役に徹してもらうべき立場といっても過言ではないと思うのですが、娘のところでは「部長出しゃばりすぎ問題」が頭を悩ませていたようです。
正指揮者である先生からの直接の指名で任せてもらっていた娘にしてみたら、いくら部長であっても自分を差し置いて練習メニューを考えたり、基礎合奏の仕切りをしてしまうことは面白くないわけであり、「だったらお前が学生指揮やれよ」と思うわけです。
ただ、娘は私が思っている以上に大人だったのか、「なんだこいつ」とは思うものの、ある程度は部長を立てながらも、オリジナルの練習を行ってみたりとそれなりに上手く活動していたように感じます。
やっぱり学生指揮に選ばれるだけはあった?演奏の実力も他の生徒に見せつけていた

もともと音楽が好きで、今の楽器(サックス)も中学の時第2希望で決まった楽器ではあったものの、1年たたずして「大好きな楽器」になり、部活とは別に個別レッスンに通うくらい熱心に練習していた楽器でもあります。
そんな娘は、高校でのアンサンブルコンテストでは校内で唯一県大会までコマを進め、強豪校と主に同じ舞台で演奏技術を競いました。残念ながらその先までは駒を進めることができませんでしたが、県大会といえど校内からは数年ぶりの県大会ですし、同級生の中ではもちろん初です。
アンサンブルコンテストの練習では、選曲から練習の仕切りを娘がすべて行い、二度ほどのサックス専門の講師レッスンを受け、指摘されたことなどを娘が中心となって微調整を行い、本番に挑みました。
地区大会では、サックスチームは八重奏や五重奏など大人数で深みのある音色を出す学校の多い中、最少人数の三重奏で挑み、見事金賞をいただくことができました。
学生指揮でよかったのか?
- 人前で指示を出したり、意見を言うことに免疫がついた
- 音楽系の専門学校への進学が決まったことから経験が役立ちそう
- 「学生指揮」という経験は、他の部活では経験ができない特別な役職だから(部長はどの部にもいる)
- 音楽的なことが認められたことは素直にうれしい
娘に、「学生指揮で良かった?」と聞くと、「まあ良かったんじゃないかな?」といっていました。娘にとって何か得るものがあったのならば、高校吹奏楽部での3年間は花丸です!!
さいごに
元々、まじめな性格の娘ですし、高校へは部活動が目当てで入ったようなものなので、部活に関しては人並み以上に熱心だったのではないかなと思っています。
高校3年間のうち、1年は運営に携わる仕事を任され、もう1年は音楽を作り上げる仕事を任され、娘にとっては多忙な部活動ではありましたが、充実した3年間だったように感じます。
幼少のころから音楽が好きで、小学生の頃はピアノを習い、中学生になると吹奏楽でサックスと出会い、高校ではサックスを吹き続けそしてこの先、音楽に携わる仕事の資格を得るために専門学校に行くことが決まっている娘。まだまだ音楽との関りは続いていくでしょう。
学生指揮という経験も今後の人生のどこかで役立つ…ことでしょう。

コメント