義務教育期間である中学生までは、「教科書代無償」であったり、「就学援助制度」などの利用が可能なこともあり、制服代や体操服代など、最初にそろえる準備用品以外ではそれほど大きなお金がかかることはありません。せいぜい10万程度のものでしょう。
ところが、義務教育が終わると「教育を受けることが任意」となるため、教科書代をはじめとし、学校に通うことに関する費用がドンと掛かるようになります。
「高等学校等就学支援金(月々の授業料無償化)」なども拡充され、一昔前と比べても高校生の子を持つ親の負担はかなり軽減されています。
しかし、高校に入学するにも「受験料」「入学金」「制服などの諸費用」「教科書代」など、何十万という単位でのお金が必要となります。 一般的な家庭であっても一度にかかるお金としては大きなものとなると思いますが、多くの母子家庭にとっては2~3か月分の生活費に匹敵するお金が一度に出ていくという、なかなか厳しい状態となります。もちろん、わが家も例外ではありません。
そんな、わが家にとって「助け舟」になる「貸付制度」の利用を検討しました。
母子及び父子並びに寡婦福祉資金貸付制度(就学支度金・修学資金)
お住まいの地域によって細かなところでは制度の差がありますが、おおむねどこも似たような制度を導入しています。詳しくはお住いの市役所の子育て関係の課や、福祉事務所へのご相談をされると良いと思います。
今回は、私の居住地域での申請の流れを書いていきたいと思います。
利用条件
- 市内在住の母子・父子家庭、寡婦である
- 扶養する子の高等学校以上の進学にかかる費用(大学院も可)を目的とする
- 貸し付けを受けて進学する子が、母や父並びに寡婦と連帯して債務を負う「連帯借入人」となること
- 児童扶養手当受給者、母子家庭医療費助成受給者、またはこれらに準じる所得である
- 借入人の生活態度が良好で、将来的に貸付金の償還が認められること
- 子に積極的な進学の意欲がある
- すでに貸し付けを利用中であれば、償還金に滞納が無いこと
- 債務整理中、破産手続き中でないこと
- 他の教育資金、奨学金との併用は不可(就学支度金は申請可)
- 日本学生支援機構から奨学金を受けている場合は、差額のみの貸付
- 外国人は、住民基本台帳に記録されており、現住所に6か月以上居住し、返還能力があり、確実な保証人が準備できることが条件
償還方法
- 貸し付けを受けた子が卒業した後、据え置き期間6か月を経て償還期間が開始されます。(最長20年)償還期間、月の償還額は相談可。
- 卒業後にさらに進学した場合は、その在学期間は償還猶予されます。(子が働き始めた段階から償還期間が始まると思って良いです。)
- 災害、盗難、疾病などは償還が猶予されます。
- 金融機関の口座からの振り替えで償還する。
- 繰り上げ償還も可能。
- やむを得ない理由であれば償還方法の変更にも相談に応じてもらえます。
- 原則無利子(または超低金利)
- 償還金を滞納した場合には、遅延損害金がかかります。
- 償還金を滞納したまま長期間放置すると、債権回収会社に委託されます。
貸付額
貸付額は自治体によって異なります。
ここでは、内閣府のページに飛べるようにリンクを貼っておきます。参考にしてみてください。
申請に必要な書類
お金のやり取りとなることですので、手続きに必要な書類は少し多めであり、中には手間のかかるものもありますので、注意が必要です。
窓口で渡してもらえる書類
- 貸付申請書
- 貸付金調査書(民生委員の証明が必要)
- 貸付金振込口座申出書
- 誓約書
- 情報調査同意書・情報提供同意書
自分で取り寄せる書類
- 戸籍謄本
- 児童扶養手当の証書または母子医療受給者証
- 資金の使途tお金額がわかる書類(学校案内、パンフレットなど)
- 借入人の身分証明書(免許証、マイナンバーカード、保険証など)
- マイナンバーカード
- 合格通知書(合格発表後すぐに提出)
- 在学証明書(入学直後に用意)
貸付決定後に郵送でやり取りするもの
- 借用書
- 印鑑登録証明書
- 口座振替納付依頼書
また、DVなどの被害者で(私もそうですが)居住地と本籍地が異なる地域である場合は、「戸籍謄本」を郵送で送ってもらう手続きをすることになります。
- 本籍地の自治体ホームページにアクセスし、申請書のダウンロード必要事項を記入する。
- 必要書類(身分証明書のコピー、切手を貼った返信用封筒など)の準備。
- 定額小為替(必要金額分を郵便局で購入)も同封する。
- 必要書類がそろっていることを確認して郵送する。
連帯保証人は必要か?
貸付金の用途によっては連帯保証人が必要になりますが、「就学・修学資金」に関しては連帯保証人は不要です。
未来ある子どものための借り入れは、なるべくできるように設定されています。
今回私が相談に行った窓口職員さんは、
「まだまだこの貸付制度のことを知らないご家庭が多いです。もっと多くの人に知ってもらってぜひ活用してもらいたいと思っています。」
と言っており、今は積極的に中学校にもパンフレットの送付をしているとのことでした。
民生委員との面談も必須
相手が自治体とはいえ、金銭の貸し借りということになりますので、誓約書や借用書の記載もありますし、地域の民生委員との面談も必須となります。
民生委員との最初の連絡は、市の職員を経由しておこなってもらうことになりますが、その後の面談に際してのアポは民生委員と借主が直接行うことになります。
民生委員からの聞き取りをおこなってもらい、調書を作成してもらってその調書を市役所に提出する形となりますので、民生委員との面談は必須となります。
貸付金だけで高校入学費用などは足りるのか?
ある程度はまとまったお金を借りることのできる制度ではありますが、正直なところ借入金のみでは全く足りません。
わが家では、「公立と私立の併願」ですので、一応はそれぞれで申請をすることになります。
どちらも10万ほどは足りません。貸付金額で事足りるとは思わないほうが良いのです。
高校進学の際には、少なくとも10万以上のお金は用意しておかなければならず、場合によっては振込が間に合わないこともあるらしいので(事務手続き上の関係らしいです)できることであれば一時的に立て替えるくらいの覚悟も必要になるかもしれません。
立て替えるくらいの貯蓄があるならば借入しませんけどね💦ここがちょっと矛盾しているところですが…私の居住地ではこのように案内されました。
実際の借り入れまでには市役所には複数回通うことになる
福祉資金の貸し付けは、市役所へ直接言って相談するところから話が進んでいくのですが、1回の訪問では終わりません。少なくとも3回ほどは市役所へ足を運ぶことになります。(書類の不備等がある場合は、市役所へ行く回数がさらに増えます。)
- 貸付金に関しての相談→必要書類を受け取る
- 必要書類の提出→この後役所側で審査
- 合格発表後に「合格通知書」を持っていく→ここで初めて貸付の手続き開始
今のところ制度上、ネットや郵送でのやり取りはされていません。
ですので、必ず借入人本人が窓口へ行くことになります。
保護者名義の借入金でも子どもにも責任が生じる
3に関しては、「借入金で進学する子」も一緒に行くことになります。
借入金は「保護者名義」であっても、「子どもの就学(修学)を目的とするもの」であるため、一応「連帯で償還する」ものとして扱われます。ですので、子ども直筆の誓約書の作成も行います。
簡単に言うのであれば、
- 保護者とともにお金を返します。
- まじめに学校へ行き、しっかり勉学に励みます。
的なことの念書です。
実際には、保護者が中心となって借り入れた分のお金を返していく形となりますが、「親にあまり苦労を掛けないように」「あなたが学校に行くことができるのはがんばってくれているお母さん(お父さん)のおかげだよ」と子どもたちに話をするためのようなものです。
さいごに
私自身はじめて利用する制度ですが、ひとり親家庭にとっては
- 連帯保証人不要
- 無利子
- 償還期限が長い
というのは大変ありがたく、また借入先も市役所である安心感もあるため、とても良い制度であると感じました。
ただ反面、
- 書類をそろえる手間(仕方ないことですが…)
- 借入金額の少なさ(準備金が全く足りないため、手持ちはある程度必要)
- 入金までの遅さ(いったん立て替える必要があるかもしれない)
が気になる点ではありました。
特に、入金が支払いまでに間に合わないというのは、いったん立て替えるということであり、立て替えるお金があるということは、そもそも借り入れる必要が無いということになってしまうので、矛盾したことになってしまうのは容易にわかることです。
ここがちょっと心配な点ではあります。(最悪カードローンで一時的に立て替えるしかないのかもしれません…💦
いずれにしても、貸付制度があるとはいえ、10万以上(高校進学の場合)は手持ち金がある状態でないと困ってしまうかもしれませんので、お子さんが進学する家庭では前もっての準備が必要と思われますので注意が必要です。