【実際の利用者が語る】母子生活支援施設を退所する本当の理由 

【母子生活支援施設とは】

<児童福祉法第38条>
母子生活支援施設は、配偶者のない女子又はこれに準ずる事情にある女子及びその者の監護すべき児童を入所させて、これらの者を保護するとともに、これらの者の自立の促進のためにその生活を支援し、あわせて退所した者について相談その他の援助を行うことを目的とする施設とする。

18歳未満の子どもを養育している母子家庭、または何らかの事情で離婚の届出ができないなど、母子家庭に準じる家庭の女性が、子どもと一緒に利用できる施設です。(特別な事情がある場合、例外的に入所中の子どもが満20歳になるまで利用が可能です)

母子生活支援施設とは | 社会福祉法人全国社会福祉協議会 全国母子生活支援施設協議会 – 全母協   より一部抜粋

わが家も「ひとり親家庭になる前提」で母子生活支援施設を利用していた過去があります。そしてこれまで、この施設での体験談などをいくつかブログで書いてきました。

母子生活支援施設は、あらかじめ用意された住居で職員の支援の下、子どもと共に暮らすことのできる『母子』にとって大変助けになる「児童福祉施設」です。

今回はそんなありがたい施設からの退所について…

「母子生活支援施設を退所する本当の理由」を知る限り書いてみたいと思います。

はじめに…母子生活支援施設での生活について

まずは記事の本題を書く前に、母子生活支援施設での生活の様子を簡単に説明したいと思います。

母子生活支援施設では先にあげたように、「18歳未満の子どもと、その子を養育してい母親」の自立を手助けするための施設です。

施設とは言っても、外観は一般的なアパートと変わらず、各世帯ごとに居室も設けられており、家賃はほぼかからないものの、水光熱費などは世帯ごとで支払うことになりますので、「家賃代がかからない賃貸物件で生活している」ような感じです。

母子が自立するために最も必要なものは「お金」となります。

特別な事情(母親の病気や障碍・離婚裁判中など母親自身の自由が縛られているなど)がない限り、「就労すること」が大前提となり、母親は働き、子どもは学校や保育所へ通うことが基本となります。

そして働きながら貯蓄をしていき、ゆくゆくは自身でアパートを借りたり、公営住宅に応募するなりして母子生活支援施設から自立することを目指します。

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母子生活支援施設から退所する理由

母子の自立を促すための施設でありますので、必ず「退所の日」はやってきます。

表向きの退所理由としてよく聞くのは、

  • 経済的自立
  • 子どもの年齢が18歳に到達

などとなっていますが、私が暮らしていた2年弱の間の「退所者」はもっと様々な理由がありました。

私の実感として多い順に、

  • 夫のもとへ帰る
  • 自分たちで生活ができる見通しがついたことによる退所(自立)
  • 子どもの年齢が18歳に到達したことによる退所(児童福祉施設の観点から)
  • 実家へ帰る
  • 子どもの父親以外の男性との結婚
  • 他の施設への入所
  • 母子生活支援施設への迷惑行為で退所

などという理由がありました。それではもう少し細かく書いていきましょう。

夫のもとへ帰る

私が施設を利用していたころの時期はちょうど「DV防止法」が改正されたころでもあり、配偶者や元配偶者のみ対象だった罰則が交際相手、同棲相手にまで拡大され、世間でも「デートDV」という言葉をよく聞くようになった頃のことでした。

私もそうだったのですが、私以外の入所者も「夫からのDV」が理由で入所されているにことが断然多かったです。(このころは全世帯の半数以上はDV理由での入所でした。)

DV理由での入所は、「夫のもとから逃れて離婚して子どもと共にやり直したい」という考えで入所していた人ももちろんいましたが、残念ながら半数位は「夫婦げんかの延長」での入所だったと感じます。

しかし、施設側では母親の意見を尊重しますので、「本当にDVだったのか、夫婦げんかの延長だったのか」は問い詰めることはしません。ですが長年様々な母子を見てきた職員さんは、人を見る能力には長けています。施設利用中にも「あそこの家庭はDVではないんだろうな…」と感づかれることはあるのです。

夫婦げんかの延長での入所者の共通点

夫婦喧嘩を行ってそのまま飛び出してきた母子に関しては、その時は感情で動いてしまったため「ひとり親家庭になる準備」をしていないことが多いです。

準備とは、気持ちの準備や物理的な準備も含みます。

『準備不足+感情で飛び出した』ことで物理的に夫との距離が離れて冷静になった時に、「あれ?私なんで別居しようと思ったんだろう…。」我に返るのです。

このタイプの人はみんな口をそろえて「こんな自由の効かないところにはいられない。」と言い出し、早い人では入所から1か月待たずに退所するパターンとなります。

母子生活支援施設は、多くの人が利用する施設であることから決まり事も多く、普通に生活していた人にとっては「窮屈」と感じることも多いです。(門限・掃除当番など)

しかし、本当にDV被害にあっていた人たちは、この決まりですら「夫と比べればなんてことない」と思えてしまうのです。

母子生活支援施設の決まり<元夫との生活と感じる人はまず、夫のもとへ帰宅されます…。私も何人か見送りました。

経済的に自立しての退所

施設側が一番望んでいる結果だと思います。しかし、実際にはこの理由での退所は意外と少なかった印象です。

なぜ自立者が少ないのか?

そもそも働いている母親が少なかったから…ではないかと思っています。

母子生活支援施設の入所者は半数以上が「生活保護」のお世話になっていました。そして就労をしていない母親が増えつつある…のも事実です。(多くは医療機関の診断書をもらっていました。)

もちろん生活保護を受けている人の中でも、「自分で働いた収入との差額」だけを受けている、「働きながら保護を受けている母親」もいました。私自身も、そんな母親の一人でした。

自分の年齢との戦い 子どもに見せる親の背中が大切

母子生活支援施設と生活保護の助けを借りつつ生活をする…。

私は、そんなぬるま湯につかり続けることが怖くなり、自分の年齢のことも考えながら「とにかく手に職」という思いで一生懸命に可能な限りの資格取得をしつつ、新たな職場で経験を積みました。当時の口癖は「今後の人生で今が一番若い」でした。

結果、アラフォーの今では勤続7年を超え、常勤職員としてある程普度の仕事も任されるようになり、信頼も勝ち取ることができました。(ボーナスももらえます(*’ω’*)

結果的に、「子どもたちを自分で稼いできたお金で大きく育てている」という実感もわき、仕事にも精が出ます。

そんながんばる母親の姿を子どもたちに見せることも、子どもたちの精神衛生上にも悪くはないと思っています。

無理にとは言いませんが、可能であれば今後の生活のためにも自立に向けての働きかけと努力は怠らないべきであると思います。

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子どもの年齢が18歳に到達しての退所

これは2つのパターンがあります。

①施設を利用できるだけ利用する

家賃がかからず、生活費をかなり抑えることのできる母子生活支援施設。家賃がかからないことはひとり親にとってはかなり「ありがたい」ことです。

一部の人はそれを「利用」していました。(利用というと言い方悪いかな…。)

家賃がかからない分、

  • 貯蓄ができる
  • 子どもの教育資金に充てることができる

などのメリットもありますので、賢いと言えば賢い考えなのかもしれません。

しかし、

  • 多感な時期の子どもを特殊な環境で育てる
  • 門限や外泊許可など、自由が世帯単位で制限されている(通常の家庭ではないことです)
  • 自動車を持つことが難しいので、よほどの都会でない限り移動手段が自転車

など、子どもが大きくなるにつれ窮屈と感じるデメリットもあり、これらを母子ともに我慢をする必要もあります。

親は自分の意志で…なので仕方ないにしても、特に高校生くらいの子になると、行動の自由が制限されることに対してモヤモヤするのではないかなと…個人的には思います。

②気がついたら子どもが18歳になってしまった

自立支援施設で生活しているにもかかわらず、特に自立のために何かをしたわけでもなく、ただただ生活をしてきてしまった人も一定数いました。

子どもの年齢がギリギリになるまで入所している家庭は、施設での居住年数が長い傾向にあります。(10年を超える人もいました。)

貯金も特になく、仕事をしていても学生のアルバイト程度、次に暮らす住居もまだ探していない…など、人生を無駄に過ごしてしまった母親もいる…のです。

この場合は、施設の職員さんが「次に暮らせる場所探し」を行います。

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実家へ帰る

これは、初めから実家に帰っておけばよかったのに…としか思えません”(-“”-)”

夫の追跡が怖くて…といった理由で実家ではなく母子生活支援施設へ入所した家庭も、短期間で実家へ帰る…。(もちろん離婚は成立していない)

こんな不思議な選択をする家庭も結構いました。

本当に夫が怖いというのであれば、せめて離婚を成立させて「他人」となってから、ご実家に戻られるのが最も安全だと思われるのですが…。

別の男性と結婚

子どもの父親とは別の男性と結婚をするために退所というパターンも珍しくありませんでした。

母子生活支援施設では、その特性上、

「基本的に中学生以上(または高校生以上)の男性の立ち入り禁止」

とされている場合が多く、母親の父親(子どもの祖父)でさえ、同性親族と共に来た場合のみ入室可能とされているくらい「男性に対して」警戒した雰囲気となっています。これは、母子生活支援施設は、多くのDV被害者も利用しているためであることからです。
そんな状況で暮らしているにもかかわらず、どこかで出会い、交際を経て結婚…する人も実は多いです。私が居た期間だけでも4人はいました…💦

他の施設への入所

知る限り3世帯はいました。

  • 元夫と再婚するために、再婚を反対している子どもたちを養護施設に入所させ母親は退所後に元夫と結婚(その後子どもはイキイキ生活している模様。母親は不明)
  • 子どもを養護施設に入所させ、母親は別男性と結婚。遠方で暮らす
  • 子どもを養護施設に入所させ、母親は賃貸を借りて暮らす

いずれも、「子どもが別施設へ移動」というパターンでした。母親の意志で子どもの将来が決まる…ということですね。

母子生活支援施設は、「母子」での入所が絶対条件ですので、子どもが別の施設へ移って母親だけになった場合は「退所しなければならばならない」ことになります。

施設に対する迷惑行為での退所

かなり大目に見られていた項目です💦

  • 入所者にたびたび迷惑をかける(ケンカを売ったり暴言を吐いたり)
  • 「お金が盗まれた」と騒ぎを起こす(虚言)
  • 近隣の住宅(施設外)に子どもが侵入する
  • 近隣住民とのトラブル

↑充分強制退所させられそうな案件ですが、なぜかこれらのことはお咎めありませんでした。(なぜだ…”(-“”-)”)

しかし、たった1回退所案件があったのです。

これを行うと強制退所になる…かも

「無断外泊」です。

私が利用していた母子生活支援施設では、入口に入所者が「在宅か不在か」わかるように名札がついていました。職員さんはその札を見て用事のある家庭に電話や訪問するかどうかを決めていました。

ところがあろうことか、「在宅中」のまま子どもを連れて無断で外泊をしてしまった母親がいたのです。しかも数日間連絡が取れなかったとのこと。(職員さんが他の入所家庭に「所在を知らないか?」と聞き込みに来ていました。)

この母子は所持金が底をついたことで数日後に見つかりましたが、警察沙汰ともなってしまったので、この後「強制退所」となってしまいました。

母子生活支援施設は外泊する際も「外泊届」が必要です。決まりを守らなかった場合は…注意が必要ですね。

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さいごに

母子生活支援施設で勤めている職員はとうぜん「守秘義務」がありますので、個人情報など他の入所者にベラベラ話すことはありません。

今回の内容は、「私が経験したこと&実際の入所者から聞いた実話」です。

入所者同士の会話は禁じられていなく、会話を行うことはもちろん、その内容も禁止事項はありません。ですので、

  • どんなDVを受けてきたのか
  • 調停や裁判の様子
  • 退所後の住居の確保の方法
  • 退所したらどこで暮らすのか
  • 元夫とよりを戻すのか

など、「母子生活支援施設」ならではの話や、疑問などを入所者同士で情報交換することも珍しくありませんでした。もしかしたら職員さんより、別の入所者の方がいろいろな情報を知っていることが多かったりもします。

私はあんまり積極的に他の入所者と関わろうとはしませんでしたが、母子生活支援施設で出会った友人(今でも付き合いアリ)からはさまざまな話を聞くことができました。

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